営業担当者から危険信号がキャッチされたら、速やかに総務・経理担当者や営業部門の管理者が相手の状況を正確に把握するための調査を開始し、必要に応じて経営者サイドに報告することが肝心です。
1. 聞き込み調査開始
同業者・下請け企業・取引銀行などに接触して、問題の企業の信用状況を収集します。ここでの留意点は、あくまでもこの収集活動はさりげなく行うことにあります。自らその企業に対する信用不安を巻きちらさないようにすることです。
しかしながら、公然と「あの企業はおかしい」と返答するところはそうそうありませんので、情報収集するときには相手の言葉のニュアンスから察しをつけるための要領が不可欠です。聞き方の工夫次第ではかなり細かい情報も得られます。
2. マスコミ情報を活用する
問題の企業について、目立った動きがあれば業界紙や一般紙などから確認できます。
- どこと取引しているのか
- 取引額が特別大きい所はないか・特定企業の取引が急に増えていないか・悪評判の企業との取引はないか
- 取引内容の状況はどうなっているか
- 支払延期の申し入れがある・納期遅れの商品はないか・決済方法が急に変わった・取引高の増減が激しい
- 変な噂はないか
- メインバンクを変えた・手形が市中金融に出回っている・融通手形(融手)を扱っている
経営が安定していない企業は、業績悪化からの倒産の危険性をはらんでいます。また特定の取引先に依存しすぎたり、危険企業と取引している企業は、連鎖倒産を起こしやすいものです。ですから、日ごろの小さなことにまでチェックしておくことで、より早く危険の芽を発見することができるのです。
3. 不動産登記簿を確認する
不動産登記簿は、各都道府県所在地の地方法務局・支局・出張所に備え付けられており、だれでも閲覧することが可能です。登記簿には企業の資産にどのような担保が設定されているか、また担当設定状況がどのように変化しているかが記載されており、極めて有効な資料です。できれば定期的にチェックするようにしましょう。
- 担保権の設定が第何位までされているか
- はじめに設定された担保権が抹消されるより先に、融資ばかりが増えてはいないか
- 資産を担保にどのような取引を行っているのか
- だれがどのような債権のために担保を設定しているのか・担保権の枠がじわじわと拡大してはないか・資金は何に使用されているのか
- 設定時期はいつか
- つぎつぎに担保設定されていないか・時期を同じくして設定されていないか
- どのような不動産に対しての設定なのか
- 本社や工場などの主要な不動産の処分がなされているか
- 担保設定した金融機関はどこか。不審な金融機関はないか・正規(メインバンク)の金融機関かどうか
- 登記している金融機関がたとえ正規の金融機関の担保権でも、1つの不動産に対して多くの担保設定がなされている場合、資金繰りが厳しくなっている可能性が高いと推測されます。また、設定者が市中金融やノンバンクの場合、取引銀行からの融資だけでは資金が足りない状況にまで陥っていることは容易に推測されます。取引先企業が設定者になっている場合は、問題の企業から売掛債権が回収不能になる危険性を察知して、緊急措置をとっている可能性が高いと思われます。
4. 経営悪化が確認できたら
取引先企業の信用に不安を感じたり、調査機関を利用して経営の悪化が確認されたら、即座に対策を打たなければなりません。急ぎ検討すべきことを、一通りまとめておきます。
- 1.取引方法の変更はできないか
- 与信限度額を可能な限り減らし、現金取引を増やしたり、それが不可能な場合には手形に変更してもらうようにして、売掛を減らしていきましょう。
- 2.契約書などで債務・債権の所在を証明できるのか
- 債権を否定されないように、万一に備えて取引状況を確認できる書類(契約書・発注書・受領書・借用書)を保存しておきましょう。
- 3.債権取り立ての手段を確保しているか
- 担保取得の確保を検討したり、取引先社長の個人保証をとりつけておく必要があるでしょう。他にも代物弁済や差押え、仮処分などの回収方法を検討して、同時に積極的な督促を行いましょう。場合によっては、先方の承諾をとってから商品の引き揚げなども検討しましょう。
- 4.法的措置をとることは可能か
- 最も危険度の高い相手には法的な措置をとることも検討しましょう。いざというときのために弁護士と協議しておくのも一つの手でしょう。