およそ社会に不安要素を与えることを目的に番組を制作しているテレビ朝日。ここで、ときおり放映しているモノに、「驚愕!盗聴器!盗撮カメラが貴女の部屋に」といった主旨のテレビ番組がある。どちらかなら、あれは暗い番組だが、今回はこれを面白く観る方法を記してみようと思う。
内容は、あの不安を煽るようなBGMはおいといて、次の順です。
- 決めゼリフ「あっ盗聴器ですね!」
- 決めゼリフ「あったあった!」
- 定番!「アナログ電波のコンセント式盗聴器」
そもそも、演技がうまい。あの種のテレビ番組で、視聴者の目を欺くことは簡単だと思います。一般的には、盗聴器や盗撮カメラの知識なんて、誰も知らないし、知る必要もない。
だから演出もし放題です。だから出演している盗聴器発見専門会社の「あっ盗聴器ですね!」にも力も入る。そこで、ひとつ目のポイント。面白いのは、いかにも偶然に盗聴電波を見つけ出した瞬間にあります…
ポイント1 盗聴電波を受信した瞬間の台詞
テレビの場面、街中を盗聴器発見専門会社の車で走行中、広域帯受信機に雑音を含みつつも、室内の生活音が入る。
この時、「あっ盗聴器ですね!」と盗聴器発見専門会社の誰だかが叫ぶわけです。まずここは、あきらかに掴みの部分。
「盗聴器というキーワード」がすり込まれる瞬間です。しかし考えてください、カラオケのワイヤレスマイクも、コードレスホンも、離れた場所で赤ちゃんの声をママが聞くためのマイクだってある。なのに、室内の音が聞こえただけで、「盗聴器」と決めつけるのです。
室内の音が聞こえただけで「盗聴器」。盗聴器発見には、25年前から携わってますが、小生にこれは言えません。電波を出すモノの中には、たしかに盗聴器もあります。しかし、これら電波を出すモノは、そのほとんどが居住者が自分で納得して取り付けたモノなのです。
だから、この時点で、なぜ、これが盗聴器だと言えましょうか。とても不思議に思うポイント、きっと演出なのでしょう。
そして、玄関前。突然、盗聴器が取り付けられた、マンションの部屋の前に取材班がたどり着きます。チャイムを鳴らすと怪訝そうな家人が出てきます。
「おたくから、お宅から、盗聴電波が出ています」
「そんなはずはありません」
「でも、そとに、盗聴電波が出ています」
「でも、うちは新築マンションだから」
このあたり展開は、起承転結でいう「承」。一般的な視聴者ならば、もう自分のことの様にも思えるところです。
「ちょっと部屋の中を見せてください」
「でも散らかってますから」
そんなやり取りの中、同意を得た盗聴器発見業者は部屋の中にはいると、その一角にアタッシュケースをならべます。今までに見たアタッシュケースの数で一番多いのは3つ。
ええ、とてもじゃないけれど、オシロスコープ類が入るようなアタッシュケースは見たことがありません。それでも、自慢のアタッシュケースからは、機械を長い財布にアンテナが付いたような、おもちゃに毛の生えたような、盗聴発見器が出てくる。
盗聴器発見業者は、部屋の中でそのおもちゃを振り回す。それは、小生にとってはコンサート会場でキャンドルライトを振ってる様にも、港の海岸で手を振って船を見送る人にも見えて、実はここが笑いのツボなのです。
ポイント2 盗聴器のある部屋で「あった!」と叫ぶ
そして、ここで決めゼリフ「あったあった!」を叫びます。本来、ここで叫んではいけません。それも盗聴器がある室内で叫ぶなど、全くのタブー、ド素人だからこそなせるワザ。小生は、ここで笑いの絶好調になるのです。
理由は、これがダミーである事が考えられるためです。更に、ダミーであった場合、デジタル式盗聴器の電源を落とされてしまう。
よろしいでしょうか。設置される盗聴器は、ひとつとは限りません。小生の経験だと、アナログ式の盗聴器とデジタル式がセットで取り付けられている方が多いのです。
これは、プロが盗聴器を取り付ける際の秘中の秘です。ひとつを見つけさせることで、もう大丈夫と安心させる。
だから、ひとつのアナログ式盗聴器を、見つけたら更に注意を払って当たり前。
盗聴している側は、ひとつが見つけられた事に気づくことで、他の盗聴器の電源を落とします。これは、外部から遠隔操作できるのです。たとえばデジタル式盗聴器なら、同じデジタル周波数を利用したリモコンで電源が切れます。
そして、最近ではとても一般的に使用されている、携帯電話を利用した盗聴器すら電波を発生させなくされてします。こうなると、通常4時間くらいかかる調査時間も倍増、発見するための難易度も高くなります。
だから、ひとつをみつけて「あったあった!」など、もってのほか。盗聴器が取り付けられている部屋に、アナログ式盗聴器があれば、デジタル式盗聴器もある事が多いのです。だからその瞬間に、デジタル式盗聴器の電源は落とされてしまう。
なのに番組では毎回これをやるのです。「あったあった!」は、いわゆる煽り。テレビ朝日は、盗聴器の存在する不安定な日本をアピールしたいのでしょう。テロップに「驚愕」「恐怖」、ナレーションに「青ざめる」などの効果が現れるのもこの頃です。
ポイント3 発見されるのはいつもコンセント式アナログ
そして、見つかるのは、定番!コンセント式アナログ電波の盗聴器。これ、ポイントを先に記しますと、無免許だから、コンセント式盗聴器しか発見できないというわけです。
盗聴器発見に関するテレビを観ていて、発見されるのは全部、三つ叉コンセント式盗聴器です。これはどうしてなのかと考えて、ああそうかと気づいたのは、「無免許」。三つ叉コンセントの付いている、コンセントから三つ叉を外すだけなら免許は必要ありません。
ところが、コンセントの裏側を触ると免許が必要になる。ここがポイントなのです。ご存じかとは思いますが、盗聴器・盗撮器の調査・発見・取り外しには国家資格が必要です。
たとえば、電気工事士の資格がなければ、電気配線・設備に忍びこんだ盗聴器を外すことも、詳しく調査することも出来ません。また電話に設置された盗聴器は、「アナログ第三種工事担任者」以上の資格がないと電話線に触れることさえ出来ないためです。
盗聴器発見に関するテレビを3倍面白く観る方法3つめのポイントは、三つ叉コンセント式盗聴器です。
考えて欲しい。駆け出しの探偵でも取り付けない、三つ叉コンセント式の盗聴器など、誰が取り付けるというのだろうか。別れたダンナだろうか、奥さんだろうか。
確かに、この辺りの関係なら、安易に取り付けられる様にも思える。そして実際、コンセント式盗聴器が取り付けられている家もある。
だが、これはあくまでも安易に取り付けられているケースであって、この類のテレビで煽られるような「ストーカーの恐怖」「盗撮」「魔の手」などのテロップに、三つ叉コンセントはまったくそぐわないのです。
これらは、シナリオである可能性がありますが、それぞれの場面では迫真の演技が観られて楽しいのです。また、3つのポイントに記した以外にも、大いなる矛盾点を探すこと。これもひとつの楽しみです。
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